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JeS}[N安倍政権と東アジア

北九州市立大学 金鳳珍

今年12月16日、日本の衆議院総選挙で安倍晋三総裁の自民党が圧勝した。これで保守右派・安倍政権が誕生、今後の日本を暫らく率いることになる。今回の総選挙ではまた、保守右派の代表格たる石原慎太郎氏を代表とする日本維新の会も躍進し、今後日本の右傾化を促しうる政治勢力を形成している。それは、日本社会における保守化の進展と保守ナショナリズムの成長を表象する。しかし、また一方では、日本の「良識、良心」を代弁する平和勢力や進歩勢力の退歩を象徴する。

今回の選挙結果は自民党の勝利ではなく、民主党政権の失敗への審判であると分析される。とはいえ、安倍総裁の自民党などの保守右派の勝利であることは否めない。保守右派を、日本国民の多数は選んだわけである。その選択の背景には、日本人の間に漂う、自信喪失と将来不安が多分にあると言ってもよい。そこから日本国民の多くは「何事も強気に出る」ような保守右派に、自信回復への望みと共に、中国・韓国の台頭に負けまい、東アジアの浮上に取り残されるまいという焦りを投じたという分析が成り立つ。

その望みと焦りは理解できる。しかし、その望みをどの政治勢力に託するか、選択を間違えているのではなかろうか。その焦りを誰にぶちこむか、相手を見損う恐れがあるのでなかろうか。はたして安倍政権は、日本国民の自信を回復し、焦りを安静させてくれるか。むしろ、自信過剰による日本の衰退を、東アジアに暗雲をもたらすのではなかろうか。

安倍政権の公約たる「日本を取り戻す」とは、民生を優先し経済大国・日本を再生することを意味するのだろう。だが同時に、「日本への回帰、先祖帰り」の意を含んでおり、一歩間違うと日本の時代逆行・衰退を導きかねない。深刻なのは、「靖国神社参拝、平和憲法改正、国防軍の保有、集団的自衛権、慰安婦強制動員(河野談話)の否認」等の公約である。これらの公約を見ると、「不幸な歴史」の見直しや日本軍国主義の事実上の名誉回復を目指しているのではないか、疑わしい。とくに尖閣諸島(中国名、釣魚島)や竹島(韓国名、独島)にかかわる公約は、すでに日中軋轢・日韓対立の火種となっている。かりにこれらの公約の一つでも実現するならば、東アジア情勢の激変は必至となるのだろう。

日本国民は「過去に戻る日本、戦争ができる日本」を求めて自民党に投票したとは思わない。ところが安倍政権の公約は、実現すれば究極に、「過去に戻る、戦争ができる日本」を作り出しかねない。公約の柔軟な解釈・運用を期待したい。なお、安倍氏のカラーは猛々しい、タカ派である。とはいえ好戦家ではなかろう。安倍政権の対外政策は「中国・北朝鮮脅威論⇆日米同盟強化⇆東アジア軍備競争」の悪循環を繰り返し、東アジアの不安定要因と緊張状態を作り出す可能性が高い。それによって東アジアは、権力政治や国家利益に取りついた現実主義が横行する恐れがある。こうした事態は避けなければなない。安倍政権には、安倍氏のカラーに囚われない、実用主義的な政策が多様に用意されていることを望みたい。

(コラムの内容は筆者の個人的な見解であり、本フォーラムの公式立場ではありません)


氏名 金鳳珍